特別対談「単なるDXコンサルには踏み込めない協業の深み」

2023年10月24日に開催されたオンラインイベント『UPGRADE JAPAN!! JDSC DAY 2023〜AI・データサイエンスの力で業界DXはここまで進化する〜』。基礎講演では東京大学大学院准教授の田中 謙司様にご登壇いただき、JDSC代表の加藤と社会課題解決に向けた現在の取り組みや、JDSCのユニークなプロダクト創出方法、両者が考えるデータ活用の未来について意見を交わしました。

 

 

両者を引き合わせた「テクノロジーで社会課題を解決」という共通目標

 

加藤エルテス聡志(以下 加藤):本日はUPGRADE JAPAN!! JDSC DAY 2023にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。

本日は当社社外取締役でもあり、東京大学大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻の田中謙司准教授をお招きし「単なるDXコンサルには踏み込めない協業の深み」というタイトルでお話をしていきたいと思います。

 

田中謙司(以下 田中):よろしくお願いいたします。

 

加藤:先生の研究分野は非常に幅広いですが、社会に対して影響を与えていくという理念を感じます。アカデミアの中で論文を書いて終わりにするのではなく、社会課題の解決に向けて取り組むことを2018年頃から始めていらっしゃったかと思います。

 

田中:そうですね。テクノロジーを社会課題に応用することが技術経営戦略学専攻の目標であり、データを使って社会課題を解いていく研究を行っています。


加藤:私たちの出会いは、私が先生の研究室にお邪魔したことだったかと思います。

 

田中:そうですね。JDSCの創業メンバーの方が工学系研究科の博士課程にいらっしゃり、その方とのご縁で加藤さんとお話をする運びになったと記憶しております。

 

加藤:「なぜ社団法人から株式会社に変えるのか」ですとか、「論文にはいいアイディアが沢山あるけど社会が変わるには大変時間がかかる」ですとか、そんな話をしたと記憶しましたよね。

 

田中:アカデミーで純粋なことをやるだけでも、論文を書くことはできます。しかし社会人を経験させてもらったからこそ、私を含め研究室のメンバーは「社会を変えていきたい」ということをモチベーションにして日々研究をしております。

 

社会で活用できそうな新しい技術を研究するということを進めていましたので、そのあたりで加藤さんを始めJDSCのメンバーと非常に話が合いました。

 

加藤:先生のもとには「こんな風なことをやりたい」「世の中を変えたい」といった志を持つ学生さんや、企業の方がたくさん相談にいらっしゃると思います。そういった方々と、どのような関わり方をされているのでしょうか。

 

田中:まず企業さまに関しては、純粋に「新しい技術を探求したい」というところもあれば「今まで打つ手がなかった課題が新しい技術で解決できるのであれば挑戦したい」というところもあります。

 

後者のように本当に技術を使ってくれそうな企業さまと、社会課題をテーマに設定して一緒に取り組むことが多いです。最初は物流やエネルギー関係の分野から取り組みを始めました。

 

一方で学生の方は、言ってみれば包丁をひたすら研いでいる状態の方が多いです。もうなんでも切れる状態を10数年、20年間と積み重ねてきているものの「これでどんな料理ができるんだろう」、「この鍛えたものをどう社会に還元すればいいんだろう」といった思いを持つメンバーが集まってくれていました。

 

そういった企業さまと学生で一緒にテーマを選び、取り組む形で進めさせてもらっています。

 

 

社会課題を解決するためのコラボレーション

 

加藤:「解決したい課題があります、助けてください」というものと、「ものすごい技術ができました、どう使えばよいでしょう」という、その両方があるということですよね。我々はどちらかというと前者の方でしょうか。

 

こういう課題を解決したいというテーマはいくつかありましたが、まだその時は内容がふわっとしていたかと思います。

 

私は製薬会社にいた頃は、ジョイントセールス、ジョイントマーケティング、ジョイント配送、共同でのロビイングなどのコラボレーションをたくさん経験したのですが、一方でITの分野やAI学習の分野ではそういった協力が全くありませんでした。ただ、多くの人が解決しようとしている課題は、大体似たようなものであると感じていました。

 

そこで当時、先生に「不在配達をもっと減らすことができるはず」「電力を安定供給していくために電力会社同士がもっと協力できるはず」「データの面で協力できないか」など、そんなアイディアをご相談していたと思うんですよね。

 

田中:そうですね。最初はまさに不在配達の課題や電力のお話だったかと思います。

 

通常、電力だったら電力、物流だったら物流のデータを使って課題に取り組むことになりがちなのですが、JDSCが非常に面白かったのは「不在配達を減らすために電力データを使おう」と提案したところです。少し業界を染み出たところのデータを探索していき、なおかつ社会も巻き込んで解決しようという方針に、我々も楽しみながら、ワクワクしながら協力させていただきました。

 

 

スマートメーターのデータ活用で年間2,000億円のロスをなくす

 

加藤:少しウェビナー参加者の方のために補足させていただきますと、これは ドライバー不足という社会課題について取り組んだプロジェクトの話になります。

 

日本の物流は非常に生産性が低いという課題があります。その低い原因のひとつが、年間で42億件ほどやりとりされている小口配送の約2割が不在配達になっているということです。「加藤さんいますか?おや留守かな、じゃあ後でもう一度来ようか」というあの不在配達です。

 

不在配達のための金銭的なロスは、ヤマト、佐川、日本郵便の3社だけの合計でも年間2,000億円あるだろうと 言われています。その他に当然時間のロスもありますし、配送員の方が出すco2も増加します。不在配達はそういった様々な社会問題を引き起こす事象でしたので、できるだけ解決したいと考えていました。

 

その中で生まれたのが「自社データだけではなくスマートメーターのデータを活用できないか」というアイディアでした。 今は電力メーターがインターネットに繋がっているものに変えられつつあり、2024年までに全国にそれがカバーされるそうです。

 

それがどのように不在配達と結び付くかといいますと「電力が使われている場合は当然人が在宅している、逆にこのような波形の場合は全く家に人がいないはず」といった分析によって、配達に訪問するべきどうかをアルゴリズムが判断します。それを自由に加工することによって、配送員の方がどのルートで回収していくべきかが見え、様々なロスを防ぐことができるといった手法です。これは横浜で実証実験が行われました。

 

 

実証実験で価値を確認、法制度への提言も

 

田中:日本の場合はプライバシーの問題がありデータが使いにくい側面がありますが、ご協力いただけるところができてありがたかったです。

 

実証実験が行われたのは、坂道が厳しいエリアです。ひたすら階段を上っていった先で不在となると、ドライバーとしてもかなりダメージが大きいですから、そういったところと一緒にやらせてもらいました。

 

やはり電力データを活用するという試みは面白かったです。電力を使ってない人は日本にはほとんどいませんし、さらにもっと言えば機械も電気を使っているものが多いので、かなり広範囲なデータになりました。それを分析することによって不在配達を減らすという話は非常にこうエポックメーキングなものだったかなと思います。

 

加藤:そうですね。実証実験を行い、非常に価値が高いということも分かりました。

 

プライバシーの問題についても自民党の部会などで議論が進められていると理解しております。
これまでのように配送員が不在を確認した場合、人によって「この家は無人である」という認識ができてしまうため、ある意味プライバシーを把握されてしまっていると言えると思います。今回のシステムでは在宅かどうかが機械によって判断されるため、人間によるプライバシー侵害がかなり減るという見方ができるかと思います。

 

もちろん機械には把握されますが、それはAmazonが自分の 購買履歴を知っているのと同じようなアルゴリズムの話です。人に把握されることが無いというのは、むしろプライバシーを守る新しい 時代のあり方ではないかという議論まで進んでいるようで、今後は法制度からも後押しがあると嬉しいなと思っているところです。

 

田中:大学側としましても、社会的な貢献が見込める研究の成果として非常に注目を浴びました。非常に嬉しく、今後もこういった取り組みを増やしていきたいと考えております。

 

加藤:弊社としてもますます将来が楽しみだなと思っております。

 

 

JDSC式ビジネスのやり方は「この指とまれ」

 

加藤:ここからはJDSCがどんな会社でどの様なことをしているのかについて、少しだけ触れようかと思います。

 

弊社は「こういう風にやれば理論上は全員にとってメリットがある」といった発見を実際に事業会社と連携して世の中に広めていくということをやっています。もちろん、AIのアルゴリズムというものを我々で作る以上、ある程度の経済性を担保しなければいけません。 社会課題を解くことを旗印にするからと言って、儲けなくていいわけでは決してないということですね。 ですので、我々はどうやってそれを両立するかということに常に尽力しています。

 

社会課題を解決するために、例えば不在を特定するアルゴリズムであったり、 特定された不在の確率に応じて配送ルートを最適化するようなアルゴリズムであったり、そういったものを研究開発として 作っていく必要がありますが、その際に肝となる進め方があります。田中先生には「この指止まれ形式だね」と昔言っていただきました。

 

皆が困っていて、解決できると全員がハッピーになるこの課題を、皆で解決しませんかという進め方です。

 

 

Joint R&Dという収益性と再現性を両立したプロダクト創出手法

 

加藤:例えば不在配達の問題で提案に行った先では、「荷物を受け取る人もハッピーだし、配送員の方もハッピー、株主もハッピー、経営陣もハッピー、現場もハッピー、みんなハッピーになる。だからこそ、ここは企業同士で競争してけん制し合うのではなく、同じアルゴリズムを共有して使いませんか」というお話をしました。その上で、そのためにこれだけの開発費を出してくださいというご相談をする形です。

 

こちらのスライドの横軸は我々の収益がどのように時系列的に変わっていくか、縦軸はその類型の赤字黒字化というのを表しています。従来の競争型で進める場合、この点線のようになってしまいます。

 

いわゆるSaaS企業が新規事業を始める際は、大型投資をドーンと行います。これが世の中の人に受けるはずだという見込みで沢山の人を雇い巨額な資金を調達するので、市場に問うてみるところまではずっと赤字でやっていくことになります。徐々にこれが受け入れられてくると、赤字から徐々に黒転していき、 ブレイクスルーを超えると非常に大きな収益を上げるということになるのですが、我々はもう少しそれをローリスクにするようなビジネスをしております。

 

初めの段階から、この社会課題の解決は全員にとって嬉しいことであり、経済インパクトも十分見込めるというテーマについて取り組むということです。

 

不在配達の例で言うと、「ヤマト佐川JPだけでも2,000億円のロスがあるので、 これを半分にするだけでも毎年大きいインパクトがあります。ですからここにご参加ください」と言って協力をいただくわけです。それによって我々は初期の赤字を大幅に下げることができ、市場に出した後には黒字化も早いということになります。

 

ここまでが理論上の話でして、本日はウェビナーにせっかくご参加いただいたので、ある程度正直に色々お話をしようと思うんですけれど、まあ一筋縄ではなかなかいかないです。(笑)

 

田中先生とも、これまで今ある社会課題とそれを解決しうる新しいアイディアについて議論を重ねてきましたが、実際のところどのように受け止められているでしょうか。

 

田中:やはりJDSCのいいところのひとつは、1社にとどまらないような社会課題にチャレンジされているところです。今の不在配達もそうですし、後にお話される介護予防の分野もそうですね。

 

そういった社会課題への取り組みというのは1社だけだと解決することが難しいものですが「この指止まれ」という形で他の会社も集まることによって突破していくという、いわゆる公的な面も含めた形で進められているというのは非常にチャレンジングで面白いところだなと感じています。

 

また、我々エンジニアも心に止めておかなければならないことですが、なんとか最新の技術を課題に当てはめようとして、本来必要のないところにも導入を進めてしまうという事態に陥りがちです。
その点、JDSCは経営者またはユーザー側に寄り添った言葉で解決する形を模索しているように思います。AI等の最新技術を全面に出して「自分たちに合わせてください」といった形ではないので、 非常に好感が持てますね。

 

なかなか市場として存在していない分野もあるので少しチャレンジングだとは思いますが、だからこそ伸びしろもあると期待をしています。

 

加藤:ありがとうございます。「社会課題を解きつつ儲かる仕事」と聞くと、まさに夢のような仕事だ、私もやりたいと多くの方々に感じていただけると思います。しかし、皆がやりたいと思っているはずなのに今日まで実現していない ということは、やはり何かしらのバリアが存在するわけです。

 

そのバリアは、エンジニア、データサイエンティティスト、ビジネス、ファイナンスといった様々なメンバーの頭脳を結集させることで、ひょっとしたら突破できるかもしれない。そんな取り組むべき課題候補リストを我々は沢山抱えています。

 

ひとつひとつ実際のパートナーを組み合わせながら、これであれば解いていけるか、これはどうかという風に感触を探っていきます。多くの場合は法改正なども必要になってくるため、じっくりと国民全体で議論しましょうというところまで持っていく。そういったやり方で進めています。不在配達についてのプロジェクトは実際にそこまで進んでいますね。

 

 

高齢化社会における課題を解決する取り組みを推進

 

加藤:先ほど田中先生がお話に出された介護領域についても、かなり話が進んでいるため紹介させていただきます。

 

要介護になる前に必ず通過する脆弱な状態のことをフレイル状態と呼ぶのですが、このフレイル状態のタイミングで回復に努めると、かなり高い確率で健常な状態に戻すことができると言われています。

 

フレイルだとわかった時点で自治体や家族が介入して、食事指導や運動指導、社会参画などを行い、健常な状態に戻すことができたらと皆さん思うんですけれども、一体どうすれば効率的にできるのかという問題は非常に難しいわけです。

 

日本では約300万人の方がフレイルの対象者と言われており、日々それが増えていっている状態です。
そこで弊社では、中部電力さんにスポンサーをいただきまして、フレイル状態の人々を電力消費パターンによって特定しようという取り組みを進めてまいりました。
この取り組みに関しては法改正をするまでもなく、高齢者ご本人の了承が得られれば我々の方でデータを解析することができます。

 

現段階では10前後の自治体で利用していただいており、民生委員の方々は我々のデータを見て「この方は今どの程度フレイル状態に近づいているかな」「先月から比べると随分好転したな、きっとあの運動がすごく合っていたんだな」ということが把握できます。その分析に基づいて危ない方から順に介入していくことができるため、非常に効率が良くなることが見込めます。

 

先ほどの不在配達と同じように、そういった問題の解決はご本人や ご家族はもちろん、保険会社や現役世代の納税者にとっても負担が減り、日本全体がハッピーになるだろうということで進めさせていただいております。

 

 

業界を超えたデータ活用により、見えなかった価値が見えてくる

 

加藤:こういった事業を見つけることができるのは、5年間に1~2件あるかないかです。そこが非常に歯がゆいところではありますが、単にDXを企業内で進めようというだけでは、ここまでの事業規模になることはないと思っております。

 

いわゆる「OCRで作業効率を上げる」だとか、「タイピングしなくても文書が自動認識される」だとか、そういった小さな話ではなく、産業を飛び越えてデータを流通させることによって、参画する人々が皆ハッピーになるようなものを我々は作っていきたいと考えています。これが弊社の大きな特徴だと考えております。

 

先ほど田中先生もおっしゃった通り、これまで存在していなかったビジネスに取り組むことはそれなりのチャレンジであり、なかなか歯がゆいところです。ここに関してはこれまで深くお話する機会がありませんでしたが、先生のビューを共有していただきたいです。

 

田中: 非常にチャレンジングだと思いますが、やりようによってはすごく伸びると期待をしているところです。

 

これまでデータというものは、その会社の中だけで使われることが多かったかと思います。ですが2010年代にデータ分析の技術は一気に前進し、データ処理のスピードも上がりました。 業界を超えたデータの使い方が成されるようになると、今まで見えていなかった価値が見えてくる、そんな時代になると思います。

 

ですからJDSCの取り組みも今後市場がついてくるといいますか、チャレンジングだけれども逆に言えばブルーオーシャンが広がってると言えるのではないかと思っています。

 

もうひとつ付け足したい事例として、JDSCで取り組んでいる海事領域での取り組みがあります。

 

今までも海事領域でのビッグデータ分析はありましたが、その実態はアナログで、取れていないデータもたくさんありました。ところが近年IoT機器が進化してきて、様々なデータが取れるようになってきています。

 

JDSCでは、センサーをつけてデータ化していこうという流れと同時に、そのデータを取得できる技術を作ろうという両輪を兼ね備えて進めようとしています。

 

業界を越えて今までなかったデータを取りにいき、データ解析の価値を向上させ、実際に役立つ形に近づけている。そういった意味で、今後一定の基準に達してくると、非常に価値を見出されていく分野ではないかなと私は思いますし、期待をしているところです。

 

加藤:ありがとうございます。今後、データの取得や処理にコストがかかったり、高い精度で処理できなかったりというような技術面における課題のブレイクスルーが予想されるため、JDSCのこういったチャレンジングな取り組みも前に進んでいくのではないか、ということでしょうか。

 

田中:そうですね。もう少し堀り下げさせてもらいますと、「今分かっていることがより分かるようになる」ということですね。例えば、技術的には遠くまで見えるといっても、実際に自分の手が届く範囲は半径数メートルであるように、「見えていても何もできない」ということが今までは多かった。

 

アクションや分析にうまく繋がるようなデータが足りず手を打つことができなかった状況を打破し、価値に変えられるようになるのではないかという可能性を感じています。

 

分かったけれど手が出せないという状況から、業界全体や社会全体に具体的なアクションとして価値を与えられるレベルに近づきつつあって、もう一歩なんだろうなと感じています。

 

 

地球の裏側からリアルタイムでデータが届く、海事領域の取り組み

 

加藤:ありがとうございます。海事領域のお話が少しあったので、最後にその話をしてウェビナー本編に移りたいと思います。

 

船というのは地球の反対側にいたりするので、以前は例えばアルゼンチン沖で何か不具合があったとしても全く見えなかったんですよね。それが今、様々なセンサー類によって、エンジンがどうなっているか、ギアがどうなっているか、プロペラがどうなっているかという機関の状況が30分毎に把握できるようになりつつあります。

 

まさに海事の領域では今先生がおっしゃった通り技術的なブレイクスルーが発生していて、今まではアナログで溜められていて航海が終わってからでしか分からなかったデータが、リアルタイムで把握できるわけです。

 

年に一度だけ人間ドックに行くのではなく、毎日の血圧や血糖値が分かるようになると、できることが全然変わってくるという話と同じで、様々な可能性が出てきます。

 

この領域に関しても、複数の会社で進めることを目標にしています。これまでは、同じような船のタイプであっても、CO2を下げるために一体どんな修繕をしているのか、エンジンをリペアーしているのか、プロペラを変えているのか、テーマサス塗料を外側に塗布しているのか、といった情報を会社間で共有することは非常に難しい状況でした。

 

しかし、データベースの作成や伝送装置の発達、解析手法の洗練化によって、「この船は大体何年経つとこのくらい状態が悪くなるから、こんなことをやると元が取れる」「こういうことをすれば燃料費が下がりCO2も下がる」といったような共有が会社を超えてできるようになります。
技術的なブレイクスルーが発生することによって情報面のバリアが減るため、こういったAIやデータサイエンスによるコラボレーションというのが進むのかもしれないと感じています。

 

 

目指すのは一社に留まる課題の解決ではなく、社会全体の課題解決

 

 

田中: データサイエンティストはあるデータだけを使うというのが基本ですが、足りない課題を解くために足りないデータを取っていくという姿勢ですよね。そういった取り組みは海事領域に限らず必要なシーンが非常に多いと思います。

 

さらに社会の仕組み作りについても期待しています。想定していなかったことが分かる時代になってきていますので、積極的に新しい技術で社会を変えていくルール作りも発信してもらえればと思っています。

 

加藤:ありがとうございます。これまでの話を通して、個別の企業の課題解決にフォーカスを当てた従来型のIT化やデジタル化 とは少し毛色が違う取り組みをしている会社ということをイメージしていただけたかと思います。

それぞれのセッションでより深掘りされると思いますので、各セッションに期待を持ってご参加いただければと思います。

 

 

■加藤 エルテス 聡志 (株式会社JDSC 代表取締役CEO)

東京大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー、米系メーカー等での経験を経て、2013年に一般社団法人日本データサイエンス研究所(Japan Data Science Consortium、現 株式会社JDSC)を創設、代表に就任。

 

■田中 謙司 (東京大学大学院 工学系研究科 准教授、株式会社JDSC 社外取締役)

東京大学工学系研究科修士課程修了後、マッキンゼー・アンド・カンパニー、日本産業パートナーズを経て、東京大学大学院工学系研究科助教、特任准教授、2019年より現職。現在の研究領域は、データサイエンスとその社会応用。

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