AI・デジタルで実現する海事業界のアップグレード

AI・デジタルで実現する海事業界のアップグレード

2023年10月24日に開催されたオンラインイベント『UPGRADE JAPAN!! JDSC DAY 2023〜AI・データサイエンスの力で業界DXはここまで進化する〜』。
Session 2では、常石造船株式会社 取締役常務執行役員 芦田様にご登壇いただき、JDSC代表の加藤、seawise代表の筒井と共に、海事産業における新たな価値創造の取り組みや、それに向けたJV設立の軌跡についてお話いただきました。

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常石造船とJDSCの協業関係

筒井一彰(以下筒井): 「AI・デジタルで実現する海事業界のアップグレード」と題しましたこの度のセミナーでは、常石造船の芦田様をゲストにお招きしております。よろしくお願いいたします。

芦田琢磨(以下芦田):よろしくお願いいたします。

筒井:当社が「UPGRADE JAPAN」をミッションに掲げ取り組む中で、深く関わっている業界の一つが海事業界になります。

海事業界とは、造船や船舶機器などを扱うメーカーであったり、船主と呼ばれる船を所有するオーナー業であったり、船を要請して運航するオペレーター業、いわゆる海運業であったり、そういったプレイヤーを中心とした業界です。

JDSCも海事業界において様々な実績を積んできておりますので、今回は 協業パートナーでいらっしゃる常石造船 芦田様と一緒に、取り組みや今後の展望についてご紹介していきたいと思っております。

芦田様には当社との協業初期からご尽力いただき、 本日も広島からわざわざお越しいただきました。

筒井:登壇者もう1名はJDSCの代表である加藤です。 常石造船様との協業が開始される当時、加藤はJDSC側の検討リーダーという立場で関わっておりました。本日は主に協業のきっかけや経緯について話してもらいます。

最後に私、筒井と申します。協業の開始当初から現場のプロジェクト推進を担当しておりまして、 JDSC側のプロジェクト責任者という立場と、後ほど紹介しますseawiseという事業会社の代表を務めさせていただいております。

それでは最初に芦田様から、常石造船についてご紹介いただきます。

造船業というと一般消費者には馴染みのない業界かもしれませんが、ご存じの通り日本は「四面環海」と呼ばれるように海に囲まれた国です。また資源に乏しい国であるため、重要資源の多くを海外に依存しており、その輸送の大部分を海上輸送が占めています。そういったことを踏まえると、日本は船とは切っても切り離せない関係であり、間接的に誰もが大変お世話になっていると言えるかと思います。

常石造船様は、ばら積み貨物船を始め特定のジャンルにおいて様々な船を開発されている世界に誇るプレイヤーです。加えて技術開発の面においてもフロントランナーでいらっしゃるということで、本日は非常に興味深い話が聞けるんじゃないかなと思います。
芦田様、どうぞよろしくお願いいたします。

120年の歴史を持つ常石造船の歩み

芦田:ご紹介いただきました常石造船の芦田でございます。本日はこのようなセミナーにお招きいただきまして、ありがとうございます。常石グループ・常石造船について、私の方から簡単にご紹介をさせていただきます。

先ほど筒井さんからご紹介いただきました通り、造船業というのは、皆様の生活に直結する場面が少ないので、この機会をいただきましてご紹介させていただければと考えております。

弊社常石グループは、5つの事業体で成り立っております。まず祖業となる海運事業、それから造船事業、エネルギー事業、環境事業、ライフ&リゾート事業いうことで、5つの事業体で成り立っております。私が所属しているのが造船事業で、国内10社、海外に13社を構える事業体でございます。

芦田:弊社グループの歴史ですが、創業は1903年です。創業から今年で120年が経ちました。本拠地は広島県福山市沼隈町常石というところで、創業時はもうかなり田舎でした。

最初に始めたのが海運事業(1903)ですね。ここで船を保有したのですが、昔のことですから当然木造船です。それがよく壊れてしまうということで、自社で船を持ちたいということで造船事業(1917)を始めたという流れでございます。

また、船を動かすには燃料が必要ということでエネルギー事業(1952)を開始、続きまして船の建造、修繕の途中に廃棄物が出るというようなことから環境事業(1967)も開始しております。 そしてお客様をお迎えするためのホテル事業が必要になるといったようなことでライフ&リゾート事業(1989)を開始した、そういった歴史の会社でございます。

グループの概要については、売上高が2022年度で2,573億円、 そのうちの64%が造船、21%が海運ということで、ほとんど造船と海運が中心を占めるグループとなっております。

芦田:ここからは常石造船の概要についてご説明をします。

本拠地は先ほど申し上げました通り福山市にございまして、創業は1917年になります。従業員数は本社で821名、 世界の全拠点協力会社を含めますと1万4100名です。詳しい拠点の紹介をさせていただきますと、私がおりますのが福山市にあります常石工場ですね。それからフィリピンのセブ島にございます主力工場であるTHI、 それから中国上海の南の方の島にございますTZSといった3拠点で、一般商船の建造を行っております。

日本国内に移りますと、静岡県清水区の三保造船所というところで漁船を建造しております。また広島県呉市の神田ドッグでは内航船を主とする修繕事業を展開しております。 それから2022年に子会社化しました三井E&S造船というのが東京にございまして、こちらは主にエンジニアリングサービスを行っております。

三井E&S造船の子会社である由良ドッグは和歌山県に位置する修繕ドッグになります。新潟にございます新潟造船は漁船建造の会社になりまして、こういった造船会社も保有しております。

次に主な建造船種についてお話します。

漁船の他にも様々な船を建造しておりまして、弊社のメイン商品は「ばら積み貨物船」になります。こちらは鉄鉱石や石炭を運ぶ船ですね。それからコンテナ船、タンカーという3つの船種を中心に事業を展開しております。

デジタルイノベーションへの挑戦とグリーン成長戦略

芦田:企業理念としましては、「社員の幸せのために事業の安定と発展を追求する」こと、 ビジョンとしましては、「期待の先へ変革を恐れず舵を切る」ことを掲げています。

これらの実現のための中期経営計画では、ESG経営による競争優位の確立するために、5つの戦略を立てております。グリーンテクノロジー、デジタルイノベーション、ライフタイムバリューの向上、人材開発、新たな領域への挑戦です。

JDSCさんにはデジタルイノベーション、ライフタイムバリューの向上に関して、これまでご協力をいただいております。

グリーンとデジタルの架け橋になるような取り組みとして、効率運航のサポートビジネスの強化を掲げております。これについては、昨年11月にJDSCさん、三井物産さん、当社の3社でseawise株式会社を設立いたしました。

芦田:我々のグリーン成長戦略に関する目標になりますけれども、CO2の排出量削減ロードマップというのを、昨年5月に発表しました。 2050年に限りなくCO2排出量0に持っていきたいというような想いから、2035年までに全ての建造船を二元燃料船(デュアルフューエル)に切り替えたいと考えております。従来型の化石燃料に加えて代替燃料も使える船舶ということで計画しています。

2026年には、全建造船数のうち約22%をデュアルフューエル船に切り替え、 それから2027年には45%~60%弱まで引き上げたいと考えております。

デジタルと製造業の底力の掛け合わせで目指す高み

筒井:ありがとうございます。私も改めて新鮮な気持ちでお話を聞かせていただきました。

お話の通り常石造船様は定量的な目標を掲げられていて、特にこのグリーンテクノロジーの分野ではかなりアグレッシブな設定をなさっているかと思います。しかし実際にこれを本当に成し遂げてしまう強い実行力があること、そしてその力が現場の方まで含めて浸透されていることを、現場に入った我々も強く感じました。

先ほど我々の社名も出していただきましたが、改めてこういった事業に参画できていることを光栄に思いました。

加藤:この120年の歴史がある中でも、船がこれだけ大きな世界環境の変化に直面するのは指折りのイベントだと思います。

海事業界において、CO2排出に対して何故これだけアグレッシブな目標を入れなければならないかということを説明させていただきます。

CII(Carbon Intensity Indicator)と呼ばれる「どのくらい効率良くCO2を出さずに運行できているか」という指標がありまして、ワンルールでしっかりと改善していきましょうという風潮が現在世界中に広がっています。

キャップ&トレードのように罰金が設けられるといった段階にはまだ至っておりませんが、 当然開示は求められますし、相対評価でAランクからEランクまで可視化されています。徐々にそれについて投資をしていきましょう、変えていきましょうといったことを言われるようになっておりますので、何かしらのペナルティが付くのも時間の問題だと考えています。

しかしながら、これを改善することは非常に難しく、大きな変革が必要になります。

常石様は掲げている目標自体も非常にアグレッシブで素晴らしいなと思いますし、それを実行するだけの突破力ですとか、それを支えるデジタルですとか、 そのデジタルなもの作りを実際形にしていくだけの製造業としての底力ですとか、横で見ていても非常にまざまざと感じるものがありました。言葉の繰り返しになりますが、私もご一緒できることを大変光栄に思っております。

筒井: 船を新しく作るだけではなく修繕するというビジネスにおいても、常石造船様はかなりのシェアを持っておられます。

我々データを扱う身としては、新しくできた船がどういう状態かというのは比較的推測しやすいものです。しかしその船が航海に出て何年後かに帰ってきた時に、データを正確に取れるかというとこれは難しい。常石様はそういった時の船の状態を検知することができる環境を保有されている点も強みであると感じておりました。

「過去の失敗を繰り返さない」JV設立を支えた関係者の想い

筒井:ここからは「常石造船×JDSC協業関係のこれまで」といったテーマで進行していきます。

2021年1月に遡り、現在に至るまでどのような歩みをしてきたのかを振り返っていきます。 当時は検討リーダーとして参画していた加藤さんから、協業当時のきっかけや経緯について振り返ってもらいたいと思います。

加藤:これからお話しますのは、ジョイントベンチャーを設立するまで一体どのような流れがあったのかという協業の生々しい話です。皆さま強く関心を持たれている部分かと思いますので、ここまで細かい情報をシェアすることの許可をいただいたことを大変嬉しく思っています。

2021年春の頃、今思い出しても非常に楽しいディスカッションが行われました。もう一度ここに帰って全く同じ話をしても楽しいと思えるほどでした。

様々なネットワークがきっかけで、常石様がデジタルを使って大きな変革を成されようとしているということをお聞きしまして、一度ぜひお話したいとご縁をいただきました。

その時にお話しさせていただいたことが、我々JDSC、ジャパンデータサイエンスコンソーシアムというのは、「コンソーシアム」なんですというものです。例えば共同購入、共同配送、共同ロビイングといったものと同じように、データサイエンスやデジタルの部分についてもシェアリングすることのメリットが沢山あります。

そのようなお話をさせていただいたところ、芦田様からも「私も同じことを考えていた。同じようなことに複数の企業が取り組み、車輪の再発明をしている。日本全体の海運業界が強くなっていくためには、もっと色々なことを協力していく必要がある」と力強い同意をいただきました。

もちろん常石様は多数のネットワークを持たれていますから、複数の会社とのディスカッションはしているところだが、まだ求めているレベルに至っていないといったお話も含めて話していただきました。

海運業界は日本が世界にプレゼンスを持っている数少ない領域の1つです。

同じくプレゼンスを持っていた自動車領域を例に見てみますと、過去にデジタル化をしようと各社が進めた結果、80年代に各会社が社運をかけてCADを作ろうとしたんですね。 しかしそのほとんどが自社だけの利用に限ったもので、用途も使用も、それを使う人のトレーニングもすべて個別の会社になってしまいました。

当時としては非常に先進的、画期的な技術が生まれましたが、それがデファクトを取れたかというと取れなかった。結果として現在、CADシステムはヨーロッパの有名な会社がかなり席巻しています。

そういった過去の失敗を海運の領域では決して繰り返してはいけない、そういった想いを共有させていただきました。

本当はお互いがシェアしたらお互いにとって良い情報があるにも関わらず、個々にITについて個別の車輪の再発明をしたり、CO2の環境対応をしたりしている状況がある。

このままでは国内企業全員が沈んでしまうから、もっと協力できないかといった話をしました。とはいえ、では今すぐ共に会社を作ろうということにはなりませんから、何が一緒にできるかということを少しずつ、お互いが歩み得るような形でプロジェクトが始まったと記憶しております。 それが2年ぐらい前のことで、当時はディスカッションがヒートアップして非常に面白かったなと懐かしく感じました。

筒井:ありがとうございます。資料には2021年の8月にMOUと書かれていますが、具体的に2社でこういった領域についてディスカッションをしていこうとなったのがこのタイミングですね。私もちょうどこのタイミングで参画して、8月末ぐらいに初めて工場にお邪魔したなと記憶しております。

その後ほどなくして開発案件としてプロジェクトが開始し、その先にジョイントベンチャーという形で事業着手しないかというお声がけをいただきまして、 三井物産様とともに新会社の検討の開始がされたという経緯になります。

JV設立に留まらない幅広い協業により生まれた変化

筒井:メインストリームの活動以外の取り組みもご紹介させていただきます。

常石様の営業活動に貢献するため、JDSCのデータサイエンスのケイパビリティを活かしたデータサイエンス研修や、sales insight(セールスインサイト)という動画コンテンツを使ったインサイドセールスのプロダクトを支援させていただきました。

また、船舶データ研究についての取り組みも開始され、常石様のグループ会社である海運会社様が保有されているデータを使って何か性能に関する示唆が出せないかといった研究も行いました。またそれに基づいて、予測モデルの開発も開始されました。

2023年8月には、常石様の船の性能評価に寄与するようなセンシングをするハードウェアをリリースしております。JDSCはソフトウェアだけではなくハードウェアを作るというケイパビリティもございますので、そういった支援もさせていただいている状況でして、本当に幅広い協業関係を築かせていただいております。

振り返ってみると本当に様々な取り組みを行ってきておりますが、ここまでの活動を振り返って印象に残っているプロジェクトがあれば、芦田様からぜひお話をお願いします。

芦田:そうですね、印象深かったものが3つあります。

最も印象が深いのは、やはりジョイントベンチャーを設立したところです。志を同じくできる3社が集まって、まずやってみようというようなことからスタートした会社ということで、私としても非常に期待しておりますし、今後もっと広がりを見せてくれたらいいなという風に感じています。

2つ目はデータサイエンス研修ですね。私の所属は経営管理本部ですが、会員のほとんどが文系です。その文系の方々にプログラミング言語のPython、 googleのTensorFlowを使って未来予測をしようというような課題を出しまして。

最初はやはり嫌がっていた方もいましたが、結果としてはDS研修が上手くいって結果が出てきました。少し手前味噌になりますが、それを経営に生かせております。研修が終わっても尚、現在もそれらを利用しながら他の予測にも使っているところです。

芦田:それから3つ目になりますが、セールスインサイトですね。

造船業というのはこれまで対面での営業活動が主体でしたけれども、インサイドセールスもやっていこうというような話になりました。背景としてコロナ禍で動きづらかったということがあります。コロナ明けにぱっと動けるようにするためにも、インサイドセールスに取り組んだという流れになります。

その時にJDSCさんのセールスインサイトを知りまして、こちらで動画配信を行いました。お客様の興味の有無が視聴時間に現れるため、興味を持っていただいたお客様に重点的にアクセスするといったことを行いました。 結果的にそれが新規顧客の獲得に繋がったということがありまして、非常に即効性のあるサービスを利用させていただいたなという風に感じております。

筒井:ありがとうございます。造船の新規顧客獲得というと我々の想像がつかないぐらいの大きな取引ですよね。本当に凄いことだなと思いながら、結果を見ていました。加藤さんからは何かありますか?

加藤:ジョイントベンチャー設立も非常に思い出深い話ですが、データサイエンス研修が本当に楽しかったなと振り返っていたところです。 データサイエンスの知識に関してはゼロベースだった方々が見る間にレベルアップしていって、仕事の時間が終わった後にも自発的に自習する姿も見られました。

芦田様が最後に触れていらっしゃいましたが、研修で学んだことが実際にビジネスに活かされるということは実はなかなか稀有なことです。こうしたデータサイエンス研修をこれまで色々な会社でさせていただきましたが、人事部に言われたから、仕方なくやっているという姿勢も、正直お見受けすることがあります。

残念なことですが、普段の業務とは全く異なるテーマになりますので、モチベーションが上がらなかったり、成果発表をする時も役員の方の身が乗らなかったりというような、そういった場面がございます。

しかしながら常石様では、金額規模で現れるぐらい大きなビジネスインパクトを出された。芦田様の様に、ビジネス・プログラミングの両方に理解がある方が中心にいらっしゃったことが大きいのかなと思っています。

社員の方の熱も感じましたし、見ていらっしゃる役員の視点も違いましたし、我々としましても楽しく研修を進めさせていただきました。

最後に非常にいい場所で打ち上げを開いていただきましたが、従業員の方が「こんなに楽しい仕事をしていて、しかもお金がもらえるなんて信じられない」といった話をされていて、それだけ凄く楽しい時間だったんだなと非常に印象的に記憶しております。

筒井:私も現場におりましたが、振り返ると本当に様々な取り組みを共有させていただきました。

seawiseが目指す”船のかかりつけ医”とは

筒井:最後に私から、seawiseの概要について説明いたします。

この会社では、船のデータを用いたプラットフォーム事業を展開しています。昨年の11月に設立し、ちょうど1年というところです。本当にあっという間ですね。冒頭にもありましたが、芦田様に取締役を勤めていただいております。

常石様のご紹介の中にもライフタイムバリューというキーワードがありましたが、seawiseとしても、船舶の生涯価値を上げていくということをミッションとして掲げています。

平たく言うと、常石様が造られた性能のいい船を良好な状態で維持し、かつマーケットにおいても評価される状態を作っていくことを目指しております。こういった価値観に関してはメーカーだけではなく、船主、用船社、あるいは荷主といった、バリューチェーンを横断したプレイヤーたちが共に目指していく姿を描く必要があります。その当面の産業共通プラットフォームとして、seawiseがあるというといった位置付けになります。

筒井:それを実現するためのビジョンとして「船のかかりつけ医」と呼ばれる姿を目指しております。

船の一生というのは、幾度もオーナーが変わったり、用船社が変わったり、荷主も変わったりといった世界です。その中で誰が健康管理をしていくのかと問われると、現状としては本当に色々な価値観が混ざっています。

この価値観が混ざっているという状態はデータという切り口から言うと、粒度が揃わない、バラバラであるという課題を生みます。

そこでseawiseでは、船のメンテナンス、あるいは船の動静、運行の情報を集めることによって、船の健康状態を改善するためにやるべきことを示唆して、利用する方々に情報提供を行っております。

かかりつけ医という位置づけですので、船の健康状態のすべてが専門というわけではありません。我々が対処できない問題については、専門医にシームレスに情報を繋いでいく。いわゆる紹介状を出すといった機能も持ち合わせております。

これら機能を通じて、船舶の生涯価値の向上を支援していくことがseawiseの取り組みになっております。直感的に分かりづらい部分もあるかなと思いますので、資料内に図解でビジネスモデルをご提示します。

筒井:1つは、先ほどから申し上げているデータ基盤、1番下の青い部分ですね。ここに船に関するあらゆるデータを貯めていきます。

2つ目が真ん中にある、アプリケーションマーケット、Exchangeと書いていますが、 Appleストアみたいなものを想像していただければなと思います。これはseawiseデータプラットホームに溜まっているデータを、リパッチをする、アプリケーションを市場に売り出していくというような基盤ですね。

その上に我々のお客様である海事産業のプレイヤーの方たちがいます。今は主に船主さんを対象としたアプリケーション開発、展開を行っておりますが、将来的にはあらゆるプレイヤーに対して価値提供をしていくことを目指しています。

設立からこれまで1年間やってきた中で、実績と呼べるものも幾つか出てきております。国内で複数の会社さんにトライアル利用をしているほか、実際に船の上で運用されているものもご提供させていただいております。海外を周っている船の上で使われているアプリケーションのサービス運用ですね。

その他、我々が専門医として頼らせていただいている企業様との連携や、 海外市場へのアプローチとして海外の船主様に認めていただくといった取り組みも始めています。そのような形で一年間、少しずつですが歩みを進めております。

ビジネスにインパクトを与える生成AI活用への期待

筒井:最後に今後の展望について、 お二人から一言ずついただければと思います。

芦田:引き続き、データ分析については力を入れていきたいと考えております。データサイエンス研修に関しては、初回は会社に散らばっているデータをいかに集めて処理するか、そして会社に対してどのような示唆を出すかというようなことをやりました。しかし数字に限らず、その他データが社内には大量にありますので、引き続き力を入れていきます。

それから近い将来トライしたいのは生成AIです。こちらを使える環境を作りたいということで、ナレッジベースをもう一度見直そうということで、取り組みを始めたところでございます。

現在もJDSCさんには色々とお手伝いいただいておりますけれども、引き続きよろしくお願いします。

加藤:生成AIの領域についても取り組まれると今お話をいただきましたが、どうやってビジネスに繋げていくかというところに大きなチャレンジがありますよね。 株式市場は非常に盛り上がっているんですけれども、実際どうやって日々の業務に落としていくか、どうやってEBITDAに影響を与えていくか、課題が大きい領域です。

それでもやりたいという風に常石様が言われているということは、おそらく色々な構想をお持ちなんだろうなと思いながら聞いていました。ビジネスと技術の両方をわかっている方が社内にいるということが、いかにその会社の宝になるかということを感じた次第です。
今後も微力ながら、引き続きご支援できればと思っております。


■芦田 琢磨 様(常石造船株式会社 取締役常務執行役員)
1997年、常石造船株式会社入社。2011年1月執行役員就任を経て、2013年1月取締役就任。2018年、取締役常石工場長3工場統括、常石集団(舟山)造船有限公司董事就任。
2022年4月 常石造船株式会社取締役常務執行役員就任。


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