ダイキンとJDSCの協創〜スタートアップ連携で描くダイキンのCVC戦略〜

ダイキンとJDSCの協創〜スタートアップ連携で描くダイキンのCVC戦略〜

2023年10月24日に開催されたオンラインイベント『UPGRADE JAPAN!! JDSC DAY 2023〜AI・データサイエンスの力で業界DXはここまで進化する〜』。
Session 3では、ダイキン⼯業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター副センター⻑ 兼 CVC 室⻑である三⾕様にご登壇いただき、JDSC執行役員の佐藤を交えてダイキン工業のCVC戦略、協創の取り組みの裏側について語っていただきました。企画系部署として経営陣・事業部とどう連携しプロジェクト推進していくのか、またその苦労話なども赤裸々にお話しいただいた貴重な回となりました。

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170か国以上で事業展開、海外売上高比率8割を超えるダイキン工業

佐藤飛鳥(以下 佐藤) :本日はダイキン工業のテクノロジー・イノベーションセンターの副センター長で、数多くのベンチャー企業との協業や 技術M&Aについても担当されておりますCVC室長の三谷様をお招きしております。 これまでの協業の歴史と概要、及び未来展望についてお話を伺っていきたいと思います。

私はJDSC執行役員の佐藤飛鳥です。日本のコア産業であるものづくり企業のDXを担当しております。 どうぞよろしくお願いいたします。

まず始めに三谷様、本日はJDSC Tシャツを着ていただいてありがとうございます。JDSCのメンバーのようになっていますけれども(笑)。

三谷太郎(以下 三谷) :ダイキンのメンバーです(笑)。よろしくお願いします。

佐藤 :ダイキン工業様は、過去何度も経済産業省が定めるDXメーカーに選定されているほど様々なDXの取り組みをされていらっしゃる、いわば日本のDXの最先端企業です。

JDSCはダイキン工業様と複数のDXテーマの推進に関して、3年以上にわたって協業をさせていただいております。

既にローンチされているもの、ダイキン工業様が「空気で答えを出す会社」として多くの企業と連携したようなソリューションを生み出していくために共同開発中のものもあります。

またその過程では、ダイキン工業様のデータサイエンティストの方の育成についても一部協力をさせていただいております。

三谷様のご所属はCVC室(コーポレートベンチャーキャピタル)ということですけれども、若干一般の皆様からは特殊な仕事のように聞こえるかもしれません。ただ、事業自体を直接持つわけではなく、企画系部署として対事業部と調整を進めながらDXを進めていくお立場という風に考えると、例えば経営企画やDX部門に所属されているような方など、多くの方も同じようなシチュエーションにあるのではないかなと思います。

まずは具体的にどのようなことを担当されていらっしゃるのか、ご紹介いただいてもよろしいでしょうか。

三谷 :ありがとうございます。自己紹介を兼ねてご紹介させていただきます。

改めまして三谷と申します。私はダイキン工業に新卒で入社しまして、最初は経理財務本部というところで、いわゆる買収した企業の子会社の経営管理などを担当しておりました。

その後、テクノロジー・イノベーションセンター、社内ではTICと呼ばれている組織に移動になり、今はそこでオープンイノベーションの推進をメインで担当しています。 来年で創業100年を迎えるダイキン工業は様々な側面がある会社ですが、簡単に特徴をまとめるとこのような会社でございます。

空調機器の中にはフロンいう冷媒が入っているのですが、空調機器と冷媒の両方を手がけているメーカーは世界でも我々だけというところが1つ大きな特徴としてあります。 近年はグローバルな事業展開をしており、170か国以上、海外売上高比率は8割を超えております。

歴史も様々な事柄がありますが、もともと『大阪金属工業』として創業したため略して『ダイキン(大金)』という名前になっている。これだけ覚えていただければなと思います。

佐藤:(社名の由来については)意外と知らない人が多いかもしれませんね。

三谷:ダイキンは9割方が空調の売り上げになりますが、実はそれ以外の事業もいくつかやっております。大きいところでいくと、フッ素化学の事業ですね。冷媒を始めとする、そういった化学事業というのも展開している会社です。

少し冒頭に申し上げましたが、売上高としてはもうすぐ4兆円に届くところまで成長を続けておりまして、特にその要因としてグローバル展開に注力してきたということがございます。

続いてのグラフでは空調の売上だけを切り出していますが、ご覧いただいている通りこの20年ぐらい海外展開を積極的に進めてきていまして、グローバルでそれなりの規模の売上を上げているというところは、ひとつ大きな特徴かなと思います。

経済価値だけでなく環境価値・社会価値を両輪で成長させる

三谷:そんな我々ですが、経営戦略として5年に1度大きく見直しているFUSIONというものがあります。現在だと2025年をターゲットとしたFUSION25になります。

特に今回のFUSIONでは、経済価値はもちろん大事ですが、それに加えて環境価値、社会価値も両方きっちり目指していく、それが持続可能な形として我々も成長を続けていく、というようなことを掲げています。

特にカーボンニュートラル、ソリューション、空気価値というものを成長戦略として掲げており、そこを目指して様々な取り組みを行っています。

そういったところを牽引するひとつの組織として、テクノロジー・イノベーションセンターが2015年に設立されました。大きくはR&Dの機能として、その中でオープンイノベーションの推進もやっている組織になります。
様々な新しい新価値創造はもちろんのこと、当然製造業ですので技術も非常に大事であるため、コア技術を高めていくこともやっています。

そういった様々な技術力の強化、オープンイノベーションというところをミッションに、800人以上のメンバーがここで日々働いています。その中でコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)のような、オープンイノベーション推進に取り組んでおります。


創業100年を迎えるダイキン工業のCVC立ち上げの背景

佐藤:CVCの立ち上げの背景について、詳しくお伺いできますでしょうか。

三谷:様々ありますが、我々がスタートアップに限らず、「協創」というものをすごく大事にしているというところが理由としてあります。

もちろん特定の欲しい技術があった時はそれを探しに行くこともありますが、第一に課題設定をして「我々は何をやらないといけないか」ということを一緒に外部の方と考えていく。 これを我々は「協創」という言い方をしています。そういったことを全社で実行しています。

特にスタートアップにはユニークな人材が集まりますから、彼らと一緒に次の成長というのを作っていきたいというのが、我々のスタートアップ連携の狙いとしてあります。

CVCの実際のメイン機能としては大きく3つありまして、「探して繋いで育てる」という言い方しています。

「探す」は文字通りどんなスタートアップがいいかを探すことです。

「繋ぐ」というのが、我々が出資をするということですね。

そして「育てる」というのは、事業連携の中で協業を大きくしていくということで、以上大きく3つをやっております。

繋ぐ部分でいくと、4年間で様々なスタートアップに投資をさせていただいており、その中の1社がJDSCさんであるというところです。

三谷:様々な事業連携をしていますが、その中から1つ事例を紹介させていただきます。

ビジネス連携という目線が強い事例になりますが、サブスクエアコン事業の立ち上げというのを、アフリカのタンザニアという国でやっております。

WASSA社様という東大発のスタ―トアップで、LEDランタンのレンタル事業をやっている会社があります。

彼らは未電化地域において、太陽光パネルを使ってLEDランタンを充電して1日25円ぐらいで貸し出すというサービスを展開していたのですが、これだけだと直接的なシナジーが我々としては無いですよね。

そこで、彼らの「1日25円払って必要な分だけ電力を買う」といったコンセプトをエアコンに適用できないかというアイデアで、サブスクエアコンと呼ばれるモデルの構想が生まれました。

現在は1日の利用に150円ぐらいのお金をいただいています。モバイルマネーでチャージした場合はスマホがそのままリモコンになるという仕組みになっていまして、 払った分だけ使えるエアコンという形で事業を展開しています。

これは本格的な事業展開の一例というところで、何をやるかという段階から一緒に考え、ジョイントベンチャーを立ち上げて実行のところまでご一緒させていただく、そういった取り組みをしております。

簡単にはなりますが、我々が進めているスタートアップ連携についての説明は以上になります。

佐藤:ありがとうございます。WASSA様の事例は年末になるとCMがよく流れているかなと思います。ご存じの方も多いのではないしょうか。

三谷:年末の時期はCMがダイキンの重点PR機会になるということで、結構流していますね。確かにこれもたまに流れています。

佐藤:(こういった事例を見ると)やはりダイキンさんはグローバルナンバーワンカンパニーとして、ミッションピースを直接取りに行くというよりも「何がミッシングピースなのか、どういう風に自分を変える必要があるのか」ということを常に考えておられるのかなと思います。

だからこそ、こういった直接的なシナジーではないけれども、間接的にシナジーを産むようなケースが出てくるんだなと改めて勉強させていただきました。ありがとうございます。


「何から手を付けるべきか」から始まった、JDSCとの協創

佐藤:さてここからは、ダイキン工業様とJDSCがこれまで一緒に何をやってきたのかということをご紹介したいと思います。

今やっていることの全てをお話できるわけではありませんが、問題のない範囲で三谷さんからお話をいただいてもよろしいでしょうか。

三谷:JDSCさんとは本当に幅広く色々な取り組みをさせていただいていますので、その一端だけにはなりますが、JDSCさんとの取り組みの中でリリースしているものを1つ紹介させていただきます。

大きく言うとデータ活用というところを軸に、様々な取り組みをさせていただいております。一例としてはルームエアコンですね。

先ほど少し話がありましたが、Wi-Fiに繋ぐことでスマホ操作できるエアコンというのが最近市場には増えていまして、そういった機能を使っていただくと我々ダイキン側に稼働データが溜まるような仕組みになっています。

これまでもそのデータを活用して色々できたらいいねといった具合で検討はしていたのですが、そのデータを本当の意味で活用できているかというと、我々もなかなかその知見がないというところもあり、十分に活かしきれてなかった状態だったかなと思います。

そういった「色々やりたいことはあるけど、どう実現していいのかわからない」「そもそも何から手を付けるべきかわからない」という状況でスタートをしていた我々でしたが、そんな中でJDSCさんとお話する機会があり、AIを活用して何かできないかとご相談させていただきました。

その結果「様々な異常についてなるべく早い段階で検出する」「異常が出る段階について予兆検出をする」といった取り組みを一緒に進めることができ、リリースまで繋ぐことができた事例になっています。既に一部、実際に運用を開始しており、成果も出てきております。

佐藤:「空気で答えを出す会社」とダイキン工業様が仰っている通り、空気質ソリューションを提供していく上で、運転データの活用はやはり非常に大事だと思います。

そこに関して我々が絡ませていただいていること自体が、非常に大きなものを任せていただいているなという思いですし、特にFUSION25の中でも、まさにサービスを作っていくんだという中で、こういった運転データを活用していくことについては、非常に大事な部分だと私も思っております。

ダイキン工業様の社内のデータサイエンスの方々とも特に連携させていただきながら進めてきました。

三谷:そうですね。テーマをどう作っていったかというところから遡っていくと非常に長い話になるんですけど、我々としては「じゃあデータあるから後はよろしくね」という感じでお願いしたわけではありません。

我々の中でもいわゆるデータサイエンティストの人材育成に取り組んでいまして、そういった中である程度の知識を学んだメンバーに加え、元々現場の課題感を持っているメンバーと、そしてJDSCさんという色々なメンバーが混ざり合ってプロジェクトを一緒に進めさせていただきました。その中で我々自身も成長していく、そんな循環で連携させていただけているかなと思っております。


ダイキン工業が日本国内有数のデータサイエンス組織を有する背景

佐藤:ありがとうございます。ダイキン工業様は人数的にも質的にも、日本国内有数のデータサイエンス組織を持っていると私自身は思っております。

最近ですと情報技術大学を設立されて、毎年100人ずつデータサイエンティストを育成していくといったやり方で進めておられるのですよね。

三谷:そうですね。設立から丸5年がちょうど経過したぐらいですね。

佐藤:そうすると、新卒の中でもそういった分野に長けていそうなメンバーを2年間ほどかけて育成するという活動を5年間やられていらっしゃるということですよね。

三谷:そうですね。元々は大学もしくは大学院を卒業された新卒の新入社員100名を対象に、2年間でデータサイエンティストになるための教育を会社側から提供させていただくという取り組みで始めました。

現在はそれに加えて既存社員、管理職、役員層に向けた講座を提供するなど、様々なレイヤーに対してリテラシーを上げていくことで、実際に手が動かせる人を社内で育ていこうという方針で進めています。

育成という観点では様々なレイヤーが学ぶことが非常に重要であると認識していますので、特にこの5年間は重点的に取り組んで参りました。

ただ、毎年100人のデータサイエンティストの卵を育てていること自体はとてもいいことなんですが、やはりその次のレベルにどう引き上げていくか、ということが大きな課題としてあります。

そういった中で、JDSCさんにはより専門性の高いデータサイエンスの知見を持った人材がいらっしゃったり、ビジネス側の連携の視点を入れていただいたりですとか、そういった幅広い視野でサポートいただいておりまして、成長を後押ししていただいているかなと思っております。

佐藤:ありがとうございます。本当にいい機会を我々はいただいているなと思いながらチャレンジをさせていただいております。

ある意味我々がプロマネ的にやらせていただいて、自分たちで分析もするけれども一部の分析は社内のデータサイエンティストの方にやっていただいたり、 逆に似たようなことを既に社内でやられていた方から我々が教えてもらったりという形になっています。 あとは生産本部、サービス本部、空調営業本部の方々、空調ビジネスというものを誰よりもわかっているベテランの方々までご参加いただき、 その方たちをコーディネートしながらモノを作っている。これが私どもとしては非常にありがたいなというか、やりがいに繋がっているなと感じています。


難易度の高いチャレンジを見据えたデータ活用

佐藤:三谷様からは今のお話と、先ほど不具合の検知などについてもお話いただきましたけども、まだ世の中に出ていない新しい取り組みについてもお話いただけますでしょうか。

三谷:方向感の1つとしては、ルームエアコン事業は大きなカテゴリーとしては家庭用と業務用に分かれるんですけども、その業務用の方々にもっと広げられないかという取り組みについては今後まさにトライしていこうと思っているところです。

具体的に言うと、製品のカテゴリーをどんどん広げていく、難易度の高いところに挑戦していくということです。

そもそも、難易度が低いとは言わないがある程度見通しがたっているルームエアコンから優先順位をつけてスタートしたという背景がありますが、最終的には難易度の高い方、より効果も大きな方に広げていくという方向性で、今まさに進めているところです。

佐藤:ルームエアコンは室内機と室外機が1対1で組み合わさっている、そういう意味で言うと、シンプルと言えばシンプルな構造になっているかなと。

一方、業務用、特にオフィス用のVRV、ビデオマルチエアコンと言われているようなものだと、室内機と室外機がN対Nで繋がっている、かつ、繋ぎ方も色々な前提条件の中で組まれているので、 我々のようなデータを解析する人間にとっては非常に複雑になってきます。

三谷:そうですね、複雑です。

佐藤:ですからここで成果を出せたら、よりダイキン工業様にも、また日々の生活というところにも大きな影響を出せるのかな、なんていう風に思いながらやらせていただいています。

三谷:結局ルームエアコンも業務用も変わらないのは、故障して使えない期間をなるべく短くするとか、より良い製品を導入していくとか、やっぱりそういったところがお客様にとっての価値に繋がっていくというところです。 それはなるべく広く深い方がいいと思うので、やっぱりそういう難易度が高いところに対しても、チャレンジしていかないといけないと思っております。


なぜいち早くアカデミアやベンチャーとの協創を目指したのか

佐藤:改めて、 我々のそもそもの出会いから、少し振り返っていきたいと思います。

私としては、三谷様に JDSC Tシャツを着せるという、こんなことができていること自体が非常に感慨深く思っています(笑) 三谷様に私から最初にメールしたのはいつなんだろうと思って今日確認してみたんですよ。2020年の8月でしたから、もう3年ちょっとになりますね。あの年も暑い夏でした。

三谷:そうですね、涼しいとはいえない夏だったように思います。

佐藤:出会いのきっかけですが、元々で言うと、エッジキャピタル様のご紹介だったなと記憶しております。我々からすると「エッジキャピタル様がダイキン工業様との機会を作ってくれた」という 非常にありがたい機会でしたが、裏側ではどんなことが起きていたのかお話いただけませんでしょうか。

三谷:結構シンプルで、当時は確か需要予測だったかと思うんですけど、我々はデータ活用に関して難易度の高い課題がある状況でした。

そういった難しいことをやってくれそうなスタートアップはいないかといった具合で少しご相談をさせていただいて、ちょうどいい会社があると繋いでいただいたのが最初の入り口だったのかなと思います。

佐藤:なるほど、ありがとうございます。他にも東京大学自体ともかなり取り組みをされてらっしゃいますよね。

三谷:そうですね。元々2018年の12月から、東京大学との産学協創協定という言い方をしておりますが、組織対組織の包括提携をさせていただいております。その中でも色々なプログラムが走っているのですが、その中の1つに社会実装の加速というものがございます。

当事者はスタートアップだろうというところで、様々な東大発のスタートアップと出会う機会をいろんな方からご紹介いただいて、我々としても日々お話しさせていただいていたという、そんな背景があります。

佐藤:今でこそこういったスタートアップやアカデミアとの連携みたいなものも増えてきたんじゃないかなと思うんですけど、ダイキンさんは非常に早かったなと思います。

改めてこうやって見てみると、東京大学との産学協創協定についてもかなり先進的な取り組みだったかと思うのですが、こういったアカデミアやベンチャーにより目を向けようという方針には、何か背景があったのでしょうか。

三谷:話し出すと長くなりますが、一番のきっかけとしては、2011年に世界で1位の空調メーカーになったということです。

我々は2010年まで世界で2番手の空調メーカーだったんですね。それまではアメリカのキャリアという会社が1位だったんですけども、2011年にダイキンが抜かして1位になり、要は業界のリーダーになりました。

そこから我々もステージが変わったというか、 明確なターゲットがあったところから業界を作っていく立場に変わったというところが、まず大きな前提条件としてあったかなと思います。

そこからオープンイノベーションをやっていかなければという流れがあって、その大きな目玉として、様々な大学との連携というものがありました。その中で東京大学と非常に大型の連携を18年からスタートしたという流れですね。

空調については我々が知見を持っていますが「次」を作っていく時にはそれ以外の知恵を取り入れていかないといけない、という意識を経営トップ層が強く持ち始めたというところが、一番の基点になっているかなと思います。

佐藤:なるほど。新しいことをしなければならないというお考えについては、私も一緒にやらせていただいているので認識しておりましたが、先ほどの「業界1位になったからこそ自分たちが新しいものを作らなければいけない、そのために業界の外と連携しなければいけない」というお考えは、今初めてお伺いし、非常に納得いたしました。


多数のAIベンチャーがある中、JDSCをパートナーとした理由

佐藤:そんな中で三谷様ご自身も、AI系の会社やデータサイエンスの会社など、非常に多くの接点があったんじゃないかなと思います。最近確認したところによると、東大発のベンチャーって 371社あるらしいんですよ。もちろん全てがAIというわけではないんですけれども。

どのぐらいのタイミングから、また何があってその中でJDSCがいいねと思っていただけたのでしょうか。「私の何が好きなの」って聞いているみたいで、ちょっと恥ずかしい気持ちになりますが(笑)

三谷:佐藤さんのおっしゃる通りAI系のスタートアップって本当にたくさんありますよね。とはいえ、やっぱりテーマに応じて得意不得意は当然あるので、我々としても1社に限ってしかやらないと思っていたわけではもちろんありません。

ただ我々の課題感として、いわゆる今で言うDXを進めていく中で、単純にデータ活用して何か面白いことができましたというだけでなく、それはそれで非常に価値があるのですけれども、やっぱりそれが結局変革に繋がらないと意味がないよね、と。

JDSCさんは最初の面談から明確にそれをおっしゃっていて、単純に「AIベンダーとして何かやります」みたいなつもりは全くないという印象を受けました。

やはり経営にとってインパクトがあることをやる、むしろ経営に逆にインパクトを与える、そういったデジタルの活用や変革をやるというメッセージが、非常に心に残りました。

まさに最初に言っていた協創みたいな話なんですけど、そういった目線を持ち議論ができる相手がパートナーなのではないかという風に感じたところが、お付き合いさせていただきたいなと思った一番の理由だと思います。

佐藤:ありがとうございます。JDSCの「C」ですよね。これはコンソーシアムから来ているので、色々な方たちと連携しながら価値を出していくという考え方を我々自体も持っております。

それが三谷様からおっしゃっていただいたような協創というところと、何か1つ共通の価値観として感じるものがあったんじゃないかと思います。


協創したからこそ、自社のことをより深く知ることができた

佐藤:この3年間を振り返ってみて、色々な私が知らないご苦労や想いがあるんじゃないかなと思いますが、いかがでしょうか。

三谷:そうですね、3年経ちましたね。長かったような短かったような感じですけども、ある意味我々もJDSCさんと一緒に社内の理解を深めていったみたいなところがあったかなと思います。

CVC室ってそもそも、勿論外部と繋ぐことも大事ですけども、やっぱり社内と繋いでいくというのも非常に重要なミッションです。

我々自身も社内のことをよく知らないといけないという中で、ある意味、我々の社内の深堀りを進めさせてもらったなと。我々自身もJDSCさんと一緒に前に進ませもらっているなとすごく感じます。

佐藤:これまでの取り組みを大きくまとめますと、ルームエアコンでダウンタイムを減らす、故障しない世の中を作る、 または故障したとしてもそれがすぐ直せる、そういった仕組みを作っていこうと進めて参りました。

そこからさらに、業務用のエアコン、VRVの方に広げていき、かつ 必ずしもセービングするものではなく、新しい付加価値を生んでいくようなものをやらせていただいているかなと思います。

世界ナンバーワンのダイキン工業が描く未来構想

佐藤:さらにもっと未来のことを考えてみると、「空気で答えを出す会社」ってものすごく大きなことだなと思っていますが、三谷様としてはどういう未来図を考えられていらっしゃるのでしょうか。

三谷:そうですね。空調領域は特にカーボンニュートラルの文脈の中で、非常に重要な立ち位置にある事業かなと思っています。

特にエネルギーみたいな領域に対しては、我々はかなり強いというか、占める部分がありますし、そういった意味でグローバルに世の中に貢献していく部分は本当にたくさんあるなと思っています。

その一方で、すごく課題も多い業界です。バリューチェーンの中でも様々な課題が今もありますし、今後より一層そういったところが出てくるのかなと予想しています。

例えば、人手不足ひとつをとっても出てくる課題はたくさんあると思います。そういった課題に対して、広範囲でよりインパクトを出す、まさに掛け算で効いてくるような取り組みは、デジタルの力をうまく使いながらやっていくことになると思います。

そういう取り組みはどんどんやっていきたいですし、やっぱりもっとグローバルに使ってもらえるようなところに繋げていきたいなと思っております。

佐藤:本当にダイキン工業様の影響範囲というのは広いなと思っております。エネルギーという領域でも全体をコントロールするような役割、そういう意味でまさに協創というのがあるのだろうなと理解しています。そういったところに我々としても、是非お手伝いをしていきたいなと思っております。

我々「UPGRADE JAPAN!!」なんていう風に言っていますけども、日本だけではなくグローバルにもソリューションを広げていけるように何かできればなと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

三谷:よろしくお願いします。


■ 三⾕ 太郎 様
(ダイキン⼯業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター副センター⻑ 兼 CVC 室⻑)
2011年ダイキン工業株式会社入社。買収会社のPMIや社外留職による投資銀行業務を経験した後、2017年に「テクノロジー・イノベーションセンター」副センター長に就任し、外部協創を推進。2019年にはCVC室を立ち上げ、室長に就任。

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